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の一部が傷つくと、体中の細胞が力を合わせてその血を止め、痛みをやわらげようとします。有機体であります。
私たちの社会は人間の体と同じなのです。社会にはいろいろな人がおります。しかし、その中で苦しみを負う人がいれば、みんなでその苦しみを一緒に担おう。これが連帯ということの意味であって、一つの体の中で節々が支え合う。2000年近く人類がこの概念を使ってまいりました。
いまから41年前、マリアンヌちゃん事件というのが起きました。父親がスウェーデン人、母親がアメリカ人、マリアンヌという一人っ子の女の子です。日本に在住していましたが、不幸にして両親が亡くなってマリアンヌちゃんが一人残されました。日本では、児童福祉法によってこの子は養護施設で育つことになりました。
そこヘスウエーデンからマリアンヌを引き取りたいという申し出があったのです。話がどうこじれたのか裁判になりました。参考人として出廷したスウェーデンの領事がこう申しました。「スウェーデンには一人の孤児に対して養育を希望するボランティアが100名おります」。これが決め手だったと思います。そのようになりました。
当時、私どもの国では100人の孤児に対して一人ボランティアがいるかいないかという時代でありましたので、私はこの領事の言葉に新鮮な驚きを覚えたのです。そのスウェーデンに私がはじめて行きましたのが1962年でしたから、三十数年前のことです。スウェーデンに行って三つのことに感心しました。
第1は、村や町に子供の公園、遊ぶ広場がたくさんあります。見ると、それが全部違うのです。皆さん方が日本の子供の公園、遊び場においでになると、どこへ行っても遊具は決まっています。滑り台、ブランコ、砂場。ブランコと滑り台は大量生産していて鋼鉄製です。そして砂場はコンクリートで周りを固める。南に行っても北に行っても全部画一的になっております。

 

 

 

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